| Book |
| 『最悪』 |
| 箸:奥田英朗 講談社 |
お薦め人:山下夕佳 |
| あれは1年前だったか、2年くらい経つのか、随分評判になったし、確か何かの賞も取ったのだったと記憶している。 私の家族はニセインテリ家族なので「山下家版太鼓判」の様な会話を好んでする。本、映画、舞台や絵画など、最近自分が出会ったオススメ物を互いに押し付けあう。父の好みは少々カタく、母は少女→オバサン路線で私の趣味の対象外。そこで弟の登場である。彼は非常に雑食で、SFから歴史物からファンタジーからハードボイルドから……とにかく食って、そしてどんどん変なヤツに成長していく。しかしながらそのエサを見つける嗅覚はなかなか鋭い。私は全幅の信頼を寄せている。 その彼が私に太鼓判を押して勧めたのが『最悪』という本である。作者は奥田英朗。これは最高に面白かった。日本のどこにでもいそうな4組位の登場人物達が、自分の身の回りに起こる小さな(?)事件にどんどん巻き込まれていく。非常にスピード感のある最悪ぶりに、読みながらこっちは「うわぁ、最悪だぁ!」と、応援とも同情ともつかない、誰に感情移入してるのかもわからない気持ちを抱きつつ、一気に読み進む。何人分もの感情がぐるぐると駈け巡った読後感はかなりグッタリしたもので、そこもなかなかの「最悪っぷり」である。 ちなみにこの原稿を書く為に図書館で順番待ちして借りた彼の新作(?)『邪魔』は、イマイチの邪魔っぷりだったな。 |
| 『パイロット フィッシュ』 |
| 箸:大崎善生 集英社 |
お薦め人:平田希望子 |
| 「人は、一度巡りあった人と二度と別れることは出来ない。」と帯に書かれたこの小説は、以前よく語り明かしていた友人に薦められたものだった。 物語は、アダルト雑誌の編集者である41歳の男の元に、学生時代に深く付き合った彼女から19年ぶりの電話がかかってくるところから始まる。「わかる?」。その声だけですぐ彼女だとわかり、鮮明な記憶が蘇ったことに彼は驚く。「二人でプリクラを撮りに行かない?」。彼女は言う。彼女は家庭も持っているのだが、ただ二人で会って話したいのだと。一応の約束をして電話を切る。彼はそれをきっかけに、彼女と過ごした時間、そしてその後の19年という時間を見つめ始める。 帯を見たときは道徳の教科書のような真面目なものを想像したけれど、読んでみると彼の出会ってきた人々と、その発想の一つ一つがとにかく面白い。「しっぽの切れた犬」の話をするアルコール中毒の友人、日本一のエロ本づくりを真剣に語る上司。そしてそういった「日常よりチョット賑やかな人々」から影響を受けていく主人公の様に、次第に目が離せなくなっていく。 読み終えた時、私の頭の中は、「記憶」というキーワードでいっぱいになっていた。恋人と分かち合った愛情の記憶、人の死に直面した悲しい記憶。さまざまな記憶は、人を勇気づけたり苦しめたりする。時間とともに記憶の在り方は変化し、苦しく感じた記憶に勇気づけられることもある。また、その逆も。「記憶」って、本当に面白く、そして怖い。それを痛感させられる。 |
| 『バースデイ・ ストーリーズ』 |
| 訳編:村上春樹 中央公論新社 |
|
お薦め人:関谷美香子 |
|
この本は村上春樹さんが、誕生日にまつわる話を集めて翻訳、編集したもので、10人の英米コンテンポラリー作家の短編に出会えます。 |