2000年12月
    1.ロンドン通信再会のご挨拶
ロンドンに暮らし始めて、早2年が過ぎました。日本の情報はインターネットで仕入れているとはいえ、肌で感じることが出来ないわけですから、自分がどれだけ浦島花子さんになっているか見当もつきません。 ちょうど2年前羽田を発ったその同じ日付、12月18日に今度はロンドンを発って、3週間の一時帰国を予定しております。  多分、何にも変わらない自分を発見することになるのでしょうが、久しぶりの日本がとても楽しみです。

    2.英語は果たして上達したか
さて、近況報告です。まずは、英語。果たして私は英語が上達したでしょうか。 答えはイエスです。ゼロ、というよりマイナスだったので、誰でも外国に暮らせばそのくらいにはなる、というレベルには達しました。 それ以上はどうでしょう。今はクラス分けのある英語学校に今は通っていないので、自分がどのくらい喋ることが出来るのか、あるいは出来ないのかを比較することが出来ません。 イギリス人と話していて、悲しいぐらい自分は英語が話せないと泣きそうになるのは毎度のことで、テレビを見ていて、分かったような気になっていても、それは画像のせいだと思います。 ただ、2年前との大きな違いは、多少分からなくても、分かってもらえなくても、おろおろしなくなったこと。いわば開き直りですね。 焦らなくなっただけ、ぺらぺらではないにせよ自分の言いたいことは伝えられるようになったし、分からないときは平気で何度でも聞き直しますから。 間違いなく完璧な日本語訛の英語で、日本人的な表現で話しています。イギリス人の友人たちがその都度私の英語を訂正してくれるのが有り難いです。もちろん、1対1のときに限ってのことですが。

    3.生涯教育学部でアーツ・マネジメント
それから学校について。私は週に1回、バークベック大学の生涯教育学部(Birkbeck College, Facuity of Continuing Education)のアーツ・マネジメント・コースを受講しています。とても密度の濃い授業です。 前期(9月〜1月)、後期(2月〜5月)で各2科目ずつとっています。 現在受講しているのは、アーツ・ポリシー&プランニング(Arts Policy and Planning)とアーツ・アドミニストレーション&マネジメント(Arts Administration and Management)です。 これらは各自選択できるので、集中して取りたい人はもっと他の科目も取ることが出来ます。授業料はフルタイムの大学生、大学院生に較べたら驚くほど安く、1科目£120(£1=165円として、約19,800円)です。イギリスの生涯教育の奥深さをしみじみ感じます。この学部は、経済的理由などで大学に進めなかった人達のために用意されているからです。 日本とは較べものにならないほどの学歴社会ですから、資格を取るということの意味は非常に大きいのです。 そして、授業時間も夜間に集中しています。これを4科目取るとサティフィケート、6科目取るとディプロマが取得できます。 この学部は基本がパートタイムですから、学生ビザはとれませんが、イギリスに住所がある人なら誰でも入学できます。そうです。面接がないのです。 ですから、私の英語力で授業に臨んでしまうと、大変な目に遭うわけです。 まず、説明会の時にも言われたのですが、アーツ・マネジメントの内容はイギリス人でさえ難しい(!)とのこと。途中から来なくなったイギリス人もいます。 最初の授業は、「アーツ・ポリシーとは何か」というテーマでグループに分かれてのワークショップだったのには閉口しました。 日本語に訳すと「文化政策」です。日本の政策でさえ考えたこともなかったのに、イギリスのだなんて。 そもそも日本の状況も知らないでイギリスの事情を学んでも仕方がないんです。これではいけない。インターネットを利用して日本のアーツ・ポリシーも学ばなくては。 それから、授業は当然英語で行われますから、この講義を聴くだけで私にはアップアップのところ、すぐに教室中でディスカッションが始まるので、私はとても発言するどころではなく、みんなの英語・英語の嵐の中で、一体今どんな話が交わされているかについていくだけで手一杯(頭一杯かな)というわけです。 そういうわけで講義は受け身ではなく常に双方向です。始終誰やらが質問していますし、グループワークも多く、プレゼンテーションも結果としてよくやります。私の金曜日は本当に冷や汗ものなのです。 とはいえ、9月末に授業が始まった頃に較べたら、ずいぶん授業についていけるようになりました。でも、ここまでは何とかクリヤしてきたものの、現在、第2回目のアサインメントAssignment(課題)で引っかかってしまいました。 2,000ワードの英文なんて今の私には無理。どうやら後期にもう一度同じ授業を取ることになりそうです。 このコースについてのお問い合わせはこちらへどうぞ。

    4.演劇天国
ロンドンで最初に舞台を見たのはミュージカルだったでしょうか。昔の日記を紐解かないと思い出せませんが、英語が全く分からないということは、劇場の椅子に座っていることさえ苦痛なんですね。 今演劇を見てもお金の無駄だとばかり頑なに心を閉じてしまい、劇場から足が遠のいていたのでした。 ところが、1年ぐらいたった頃、英語が完璧に理解できる日を待っていてもそれは永遠に来ないということがわかったので、こわごわ劇場に通い始めました。 もちろん英語は分かりません。でも、楽しい。少なくとも1年分英語が分かるようになっていました。 そして、演劇は前売り券を買わないとなかなか行かないということに気がつきまして、できるだけ前売り券を買うようにし始めました。現在はナショナル・シアター(国立劇場)のフレンド(最近友の会が出来ました。それまではメーリングリスト)になっていて、優先予約を利用してできるだけナショナルの舞台は見逃さないことにしています。詳しくはナショナルのホームページでどうぞ。  そして、いまや舞台は楽しいです。たとえ、英語が分からなくても3時間だって椅子に座って、劇場の一部になっているのがとても楽しい。なーんだ、私って演劇好きだったんだ。だから劇団続けてきたんだ。と再発見した気分です。 最近では英語が良くわからなくても、笑うタイミング判るようになりました。さすがに言葉のおもしろさで観客がどっと笑うときも、ここだーと思うところで笑うんですね。悲しいのはなんと言っているのか分からないところですが。 後で読もうと思って一応上演台本を買うのですがなかなか読みません。ナショナル・シアターは正式名称はロイヤルがついていて、ロイヤル・ナショナル・シアターRoyal National Theatreといいます。劇場が3つあって、大きい方からオリヴィエOlivier、リトルトンLytteleton、コテスローCottesloe。一番小さいコテスローは観客席200程度で、演出家が今一番やりたいという劇場だとか。 この1年を振り返ってもチケット完売で大当たりの演目が何本もあります。 何せ国立劇場。演劇の分野では国からの助成金が一番多いところですから、失敗は厳禁のようです。ナショナル・ロッタリー(国営くじ)の助成金も得ているのですが、これは自分たちでも予算の何%かは集めなければならないそうで、友の会が出来たのもそういう金策の手段だと思うのですが、本当にマネジメント・サイドは大変でしょうね。

    5.今年見た舞台
一番印象に残ったのは、コテスローで夏に見た「ブルー/オレンジ」という登場人物3人の作品(演目'Blue/Orange' 劇場Cottesloe Theatre, 観劇日8 June 2000)。この作品でとても印象に残った男優さんが、オリヴィエで上演されていた「ロミオとジュリエット」のロミオを演じています(OlivierTheatre,チケットが見つからないので観劇日が分からない)。やはりコテスローで「The Waiting Room待合室」という作品を見たのですが(21 June2000)、女主人公シャバナ・アズミShabana Azmi(インド人女優)の存在感の凄さは今でも思い出せます。この作品はタニカ・グプタTanika Guptaの新作で、イギリスに住むインド人の生活を書いているのですが、俳優は皆インド系イギリス人で英語での上演でした。この作品は良く分かりました。そして面白かった。来年のこの人の新作「Life×3」のチケットは買っています。
  ドンマー・シアターからコメディ・シアターにやってきた「パッション・プレイPassion Play」の二人一役にはびっくり。あと、リトルトンで上演された「ハムレット」のSimon Russell Bealeは好きでした。個人的にはシェイクスピアのグローブ座Shakespeare's Globeの「ハムレット」よりナショナルの方がよかったのだけど、グローブ座は何回行っても楽しい。ここの会員にもなりましたので、優先予約で来年のシーズンの全公演制覇したいです。 今年は「テンペスト」を見逃しました。その代わり、バービカンのピット・シアターでの「テンペスト」には行きました。 人に会う用があってユーストンにいたので、ユーストン・スクエア駅からバービカン駅に地下鉄で行こうとしたらなんと地下鉄駅封鎖。驚くことはありません。よくあることです。諦めてタクシーを捕まえましたがわずかに遅刻。はじめの50分あまりは入場できずロビーのモニターを見ておりました。残念。
 最近ではコテスローで芸術監督トレバー・ナン演出の「桜の園」を見ました。今まで見た中で一番客席が少なかった舞台でした。そのせいもあるでしょうが、チケットが手に入れにくかったです。チェーホフはイギリスでも人気のある作家ですから、余計ね。
  今年の始め見た「イアネス(女相続人)」のイブ・ベストが私は結構気に入っているのですが。何も分からず見ているうち、少しずつ好きな役者さんとかが出来てきたのも楽しみの一つ。

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劇団一跡二跳

e-mail: isseki@m5.gyao.ne.jp / 制作:岸本 匡史